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もう異世界には呼ばれたくない

作者: 樽谷

 ある初夏の日の早朝、窓からそよ風が吹き込みカーテンを揺らす。カーテンの隙間から暖かな眩しい太陽の日差しを顔に受けてまぶしさで目が覚めた。


「う~ん・・・まぶしいな~・・・もう朝か、まだ眠いな~・・・」


(あ~でも今2度寝したらもう起きれる自信がないな・・・そうなったら学校に遅刻か・・・やばいな、仕方ない起きるかな)


 しぶしぶと、ベッドから名残惜しそうに起き上がり、寝巻のまま一階に降りてトイレに行き、歯を磨いたてリビングに行った。


「母さーん、あれ? 父さーん・・・・二人とも、もう仕事行ったのか・・・まだ5時だっていうのに相変わらず早いな~」


(それにしても、まだ眠気が取れないな~2度寝しなかったからちょっとは時間には余裕あるし、シャワーでも浴びてすっきりするかな)


 そうしてシャワーを浴びて、最後に冷水で顔を洗い冷たさで目が覚めてシャキッとしたところでシャワー室を出て、体を拭いて髪を乾かし着替えてダイニングに行くとテーブルの上にトースト・ベーコンエッグ・サラダと昼食の弁当が用意してあった。

 コーヒーを淹れて朝食を食べ終え、2階に戻り制服に着替えて鞄を持って部屋を出ようとした。


「さてと、学校行くか~(ガチャ)うわなんだ?」


部屋のドアを開けると、まばゆい閃光が走り手で顔覆い、それでもまぶしくて目を閉じた。



 光が収まったのを感じ目を開けると、今自分の手で空けたはずのドアが無くなっていて、そこにあったのは白い部屋だった・・・部屋と認識していいものかと思うほど、とても不思議な白い場所といった感じだ。


 (またか・・・)そんなことを考えていると背後に気配を感じて振り返ると、そこには・・・・


「こんにちは、いや、おはようかな? はじめまして、私は女神フィールです。如月(キサラギ) 享也(キョウヤ)さん」


 そこに居たのは、白いドレスのようなものを着た金髪でモデルのようなスタイルのいい美女だった。


「ああ、はじめましてだな、フィールさん。それとも『女神様』と、呼んだ方がいいのか? で、こんなとこまで俺を呼び出して何の御用かな?」

「あ、あれ~? お、驚かれないのですね・・・・あれー?・・・・こんな時の対応はどうしたらいいのかしら・・・えーと、たしかー・・・・」


 フィールはあたふたと慌て始め、本の様な物を取り出して読み始めだした。仮にも女神のそんな姿が見るに堪えなかったのでフィールに落ち着くように言った


「フィールさん! 落ち着いてくださいよ、女神の威厳が台無しですよ?」

「あ、すいません・・・・取り乱してしまいました・・・・・それにしても・・・・えーと、『享也さん』とお呼びしてもよろしいでしょうか?」

「ええ、かまいませんけど」

「では、享也さん・・・なんでそんなに落ち着いていられるのでしょうか? もしかして今の状況を理解していらっしゃるとか?・・・・(でも、まさか・・・人間が、そんなことは・・・ありえるわけないよね・・・)」


 フィールは目を泳がせつつ俺に質問してきたが、本音がだだ漏れだった。


「フィールさん・・・素が小声で漏れてますよ? あと、お互いさん付けや丁寧な言葉遣いをやめて素で話さないか?」

「え! 聞こえちゃってたの? あ・・・では、いつも通りに話しますね~その方が楽だし・・・では、気を取り直して、もう一度聞きくね、享也はなんでそんなに落ち着いていられるの? もう、逆に私の方が慌てちゃったよ? あはははは」


 素で話し出すフィールは女神の威厳なんてものは皆無だった。


(自分で素で話そうと言っといてなんだが、それでいいのか女神)


「ふむ、フィールはこういう・・・・異世界への人間の召喚の様なものは初めてなのか?」

「あ、うん、こうい召喚というのは今回が初めてだったんだよね~」


(ああ・・・やっぱりか、通りで手際が悪いと思ったよ)


「そうか~・・・じゃ、次はもっと手際よくやってね~。じゃ、俺は帰るから!」

「え? ちょ、ちょっとまってよ! 帰るって? えー、どうやって?」

「ん? 転移系の魔法で帰るよ?」

「えーー! う、嘘だよね? な、なんで只の人間に転移なんて使えるの? じょ、冗談うまいなーもー、あはははは」


(ま、普通は信じられないだろうね。だけど俺にはできるんだな~これが)


「んー、何と言うか・・・・・俺ってフィールが思ってるほど普通(・・)の人間じゃないんだよね・・・・」

「え? 普通の人間じゃない? あれ? でも・・・たしか、この資料では・・・地球・・・日本・・・一般的な普通のってなってるし・・・う、嘘ですよね?」

「フィール・・・マニュアルや資料ばかりに頼ってるから、こういう不測の事態に無様を晒す事になるんだぞ! 一応は女神なんだからどんなことがあろうと冷静を装って、臨機応変に対応できるようにならないとだめだぞ」

「は、はい・・・・・(なんで私が人間に怒られないといけないのよ・・・)」


(フィール・・・だから本音漏れてるっつーの、まったく・・・これでも女神かよ、上の奴はどんな指導してんだよ)


「ちなみになんだけど、フィールって今何歳なんだ?」

「じょ、女性に年齢を聞くのはどうかと思います!」


 そう言ったフィールに苛立ち、俺は殺意を込めて睨みドスの効いた声で「・・・・いいから答えろ」と言うとフィールは弾かれたように姿勢を正して答えた。


「はい! 1253歳です!」

「え? そんなもんなのか・・・・まだ若いな、俺は累計10万歳を超えた辺りから数えてないな・・・・」

「10万? え? 享也って人間だよね? 10万歳超えとか私の知り合いにも数人しかいないよ?」

「本当のことだ。実はな、俺はもう何回も異世界転生とか異世界転移をしている」

「えー! そんな何回も異世界行ってる人間なんて聞いたことないよ?」


(だろうな~千そこそこの女神じゃそうかも知れないよな~でも本当なんだよね~残念ながら)


「事実なんだからしょうがないだろ? そんなわけで異世界なんてもううんざりだから二度と俺を呼ばないでくれ! ついでに、知り合いの神や女神とかにも言っておいてくれ」


 そして俺はフィールに背を向けて帰るために魔法を使った。


「そういうわけだから帰る『転移ゲートオープン』」

「ま、待ってー! お願いします! 待ってくださーい!」


 俺が魔法で開いたゲートに入ろうとしたらフィールが足にしがみついて止めてきた。


「お願いですから・・・えぐっ・・・助けて下さいよー・・・ううっ」


 フィールが泣きながら頼んできた。既に女神の威厳なんて皆無であった。


(人に泣きつく女神って何なんだよ・・・さすがにこんなのは初めてだな。フィール、情けなさすぎだぞ)


「分かった分かった、話だけでも聞いてやるから手を離せ! 逃げないから・・・な?」


 話を聞く前にフィールにちょっと気になっていたことを質問してみた。


「あのさ、前から思ってたんだけどさ、なんで日本の高校生ばっかり転移とか転生とかさせるんだお前ら? 国なんて他にもいっぱいあるだうに・・・それに、女神や神が自ら自分の世界の奴らを呼んでチート能力の1つでも授けてやれば喜んでなんとかしてくれるんじゃないのか?」

「えーと、マニュアルでは異世界のそれも日本の男子高校生が1番いいとなってまして・・・」


(なんだそれ? どこのだれが作ったマニュアルだよ! いい迷惑だぞ・・・もう神の国とか亡ぼせないかな・・・)


「・・・・捨てろ」

「はい?」

「そんなマニュアルは今すぐ燃やして捨ててしまえ! なんならもう俺が何もかも燃やし尽くしてやろうか? だいたい自分たちの世界なんだろ? そこに住んでるやつに先にやらせるのが筋なんじゃないのか?」


(一応は正論を言ったつもりだが、どう答えるかな?)


「す、すいません! おっしゃられる通りなんですけど、こちらにも事情があると言いますか、何と言いますか・・・こっちだって大変なんですよ! 色々あるんですよ!」


 フィールが最初は縮こまって喋ってたのが、いきなり手をブンブン振って怒鳴るようにしゃべり始めた。 

(え? なんだおい、いきなり逆ギレか? 滅しちゃおうかな?)


「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「え・・・いや、あの・・・・その・・・・すいませんでした・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「享也、無言の圧力やめて、怒鳴って悪かったから! 逆切れしてすみませんでした!」 


 今度は殺気を込めてみた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「もう怖いからその無言で殺気だけ飛ばすのやめてー」


 フィールが怯えたのを見て多少は溜飲が下がったので、改めて話を聞くことにした。


「分かったよ。で、フィールは俺に何をして欲しいくてここに呼んだんだ?」

「えーと、それがですね・・・ちょっと暴れてる魔王を何とかして欲しいな~と思って」

「そのくらい自分で何とかできないのか? てか、お前の世界に魔王に対抗できる勢力は何もないのかよ」


(軍隊なら多少は対抗できるはずだろうに。被害がって言うなら自分たちの世界の事なんだから被害が出ても仕方ないだろう)


「私は下界に降りることができないし、あまり干渉するなって上から言われてて」

「いや、だからって他に頼むとか他力本願過ぎやしないか? 仮にも女神だろ? 他の神や女神は助けてくれないのか? それとも神や女神は他の世界に直接干渉はできないか?」

「はい、不干渉というものがありまして・・・・」


(またか、またそれなのか! こいつらはいつもそうだな)


「いつも思うがそれがおかしい! 神同志は不干渉なのに、なんでこっちん世界の人間をそっちに連れて行くのはいいんだよ! 納得いかんぞ!」

「それはそうなんだけどー、私が決めたわけじゃないし、上に行ってもらわないと—」


 フィーネは不貞腐れて、上のせいにし始めた。なんかもう面倒になってきたので、もう魔王を倒してやることにした。


「もういいや、今回だけだぞ。で、ここから魔王のいるところは映せるのか?」

「ええまぁ一応は、今は魔王の城にいるよ」

「じゃ、とりあえずその魔王の城をウィンドウでも何でもいいからここに映せ」


 フィーネが何やら呪文らしきものを唱えるとちょっと離れた所に大く透明な画面が浮かんだ。


「おいフィーネ、ちょっと右手を貸せ」

「はぁ、こう?」


 俺は左手でフィーネの右手を握った


「な、なんですかいきなり! せ、積極的ね、でも私は女神! 軽い女じゃないわ!」

「何を勘違いしてるんだ、バカ者が! いいから魔王の城を映したままにしておけ」


 耐えきれずフィールの頭に拳骨をお見舞いした。


「いたたた・・・お茶目な冗談なのに、何も拳骨落とす事は無いと思います! あと、一応女神だし!」


(なんかもう女神の肩書がついで見たくなってきたな・・・まぁいい、早く終わらせて帰ろう)


「ここって『虚数庫』とか『収納庫』みたいなの使えるか?」 

「えーと、『アイテムBOX』ってのが使えるわよ」


(じゃ、『アイテムBOX』───────でたな、この世界でも使えそうな物なんかあったかな~)


 『アイテムBOX』を開いて、何か使えるものは無いかと中を探っていたらフォークと拳代の石があったのでそれを出した。


「へ? そんなものどうするの?」

「魔王にぶつける」

「・・・・・・・・」


 なんか静かになったなとフィールを見ると口を開けたまま固まっていた。


「おーいフィール、どうした?」

「いやいやいやいや、どうしたじゃないでしょ? 石とフォークで魔王が倒せるならこっちの世界の奴にやらせるわよ!」

「ああ、まぁいいから見てろ」


「『ディメンションウィンドオープン』───よし、ちゃんと魔王城が見えるとこに出たな」

「え? なにそれ? そんな魔法知らないんですけど!」


 フィールを無視してまずは石に魔法をかけることにした。


「とりあえず石の内部に『フレアボム』を仕込んで、あとはそうだな『テラ・プロテクション』『テラ・ブースト』『テラ・アタック』『マジックキャンセルフィールド』こんなもんかな? 余りやり過ぎると星を貫きかねないしな」

「なんか物騒な事言ってる気がするんですけどー!」


 フィールにかまわず魔王城に向かって、石を投げた投げた。石は音速を超えて魔王城へと迫って行き・・・そして、魔王城に張られた結界を突き通して魔王城に石が当たった瞬間、俺が「爆」と言うと石への補助魔法がすべて消え『フレアボム』が発動し大爆発が起こった。


「なに・・・あれ?」

「ちょっとしたメテオと爆弾を合わせたようなものだが? にしてもさすがは魔王だな・・・まだ生きてるぞ」


 クレーターの中央に光の壁の様な物に囲まれた人影があった。


「じゃ、止め刺しちゃうか」


 フォークに先ほどの魔法(マジックキャンセルフィールドは除く)以外に『全属性付与』『全属性耐性』『物質超強化』『時間停止』『空間隔絶』『プロミネンスノヴァ(時限式)』」さらに闘気を纏わせた。


「さてと、これを『荷電粒子砲』で打ち込む!」

「え・・ちょ、ちょっとー、なんかやな予感するんですけどー」


 かまわずフォークを雷球で包み、それを雷を纏った右手で思いっきり殴った。


「さすがにこれなら殺れるだろ?」


 フォークは光となってで魔王目がけて飛んで行き魔王とぶつかったかと思うと───────地表に小型の太陽が生まれた。しばらく輝き続け、光が収まった後にはクレーターがあるだけだった。


「お、倒せたな。跡形もないや」

「・・・・あの・・・規格外すぎる・・・こんな・・・ありえない程の破壊魔法・・・地表に太陽とか悪い夢だ・・・」

「そこまで驚かんでもいいだろう?」


(ちゃんと破壊範囲は絞ったんだがな・・・さすがにここから魔王だけをかき消すのはちょっと難しいし、これで上出来だろ? あ、ウィンド閉じないとな)


「『ディメンションウィンドクローズ』───ところでフィール、俺はこれで帰っていいんだよな?」 

「え? ええまぁ・・・いいのかな?」


 フィールの様子がおかしかったが、ちょっと気になったことがあったので聞いてみた。


「なぁ、魔王討伐の褒美って何かもらえないのか?」

「う? う~ん、享也に上げれるほどの褒美って何かあったかな? 能力系統は十分だろうし・・・逆に何が欲しいの?」


(そう言われてもこれと言って欲しいものは無いんだよな。女神の恩恵なんていらないしな・・・大体元の世界じゃ能力なんて使えないし・・・あ、あれはだめかな?) 


「神や女神たちが俺に干渉できなくなるようにして欲しい!」

「うん。それ、無理!」

「だと思ったよ。じゃ、帰るよ。フィール、女神の仕事がんばれよ~」

「は~い。享也、お願い聞いてくれてありがとね。じゃ、さよなら~」


 フィールはそう言うと、俺を送ると言ったが自分で帰れるからいいと断り、元居た世界をイメージして呪文を唱えた。


「『転移ゲートオープン』───────よし、成功! じゃ、さよなら」


 俺はゲートを潜っても解いた世界へと帰還した。もう二度と異世界に関わりたくないと思いながら・・・


fin



お読みいただきありがとうございました。感想など

この作品はプロットを書かずに勢いで書き始めた物で、当初はテンプレな異世界物を目指していました。

書き始めからすでにテンプレ展開から外れて来てしまい、最後はこんな感じで締めました。

書き終えてから最後の展開を変えた物を考えたりしもました。


『魔王は倒せたが魔法が最後の力で呪いを発動させてフィールと享也を他の世界へ弾き飛す。さらに享也は能力のほとんどを失ってチート無しのレベル1になる。フィールは女神の力を失って、ただのレベル1の僧侶になってしまう。知識だけはあるからそれで異世界で生きていく異世界冒険記』


と、考えはしたんですが・・・結局今は別の物を書いてます。(ある程度形になったら連載を投稿します)

また何か思いついたら短編としてでも投稿するので読んでいただければ幸いです。

では、乱文にて失礼いたしました。



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